2010年、私を殺しかけた本たちの記録

「今年、どんな本読んだっけな?」と考えると、一年の長さに気付かされる。 私の記憶に強く残っている本には二種類ある。読んでいて止まらなくなり、寝る間も惜しんで読んだ本。一方、対照的にあまりの言葉の強さに心が壊れそうになって投げ出した本。 後者…

「s.t.」――佐々木中『切りとれ、あの祈る手を』第一夜前半

本屋は嫌いではない。 よく行くところではあるけれど、好きなところ、というわけではない。なにか欲しい本がある時はいい。 「著者は△△、タイトルは○○で、××の出版社から出てて・・・」 そこまで限定されてなくても、なんらかの情報探索の指向性があるときは…

「私は生きているだろうか」(2008/12/20の日記から)

(2008/12/20の日記から)最近、また、時々苛々が止まらなくなった。 お陰で、部屋のドアに穴が開いた。オシャレに隠したけど。 「なぜ、苛々するのか。」 理由はない。苛々するから苛々する。 いつも、苛々してから、理由をさがしている。 そう考えると、理…

自由の重苦しさについて

自由って重苦しいだけじゃない? 選択肢が増えれば増えるほどどうしていいかわかんなくて、結局無難な道を選んでる。選択肢が増えた、多様な未来を描く可能性に開かれた、制約の少ない社会になった…「君たちは無限の可能性に開かれている」これは確かにその…

「寂しがりの一人好き」の、ストレス性頭痛について

頭痛がする。(…って本当によく言ってる気がする) 拍動性のヤツと、ずしーっと重いヤツが共存しているから質が悪い。 村上春樹ならきっとこの頭痛をもの凄く的確に書いてくれるに違いない。 彼の頭痛に関する表現は、綴じて纏めておきたい位、的確すぎる。…

嘘を信じることの価値 ― 人間関係の終わり、別れ、絶望に関して

■「人間関係の終わり」ってものはいつなんだろうと考えていた。人間関係の終わりは、相手の死ではない、とは思う。 死の瞬間から、喪の作業が始まる。 もう手に触れることはできないけれど、死の瞬間から相手は初めて自分の中で確実性を伴って生きはじめる。…

愛するものの喪失という悲哀

失恋であったり、 死別であったり、 自分の持てる愛情を向け続けたものを失うこととは。 とか、このところ考えていたところに、サン=テグジュペリ『夜間飛行』に、 考えさせる一節があったので、引用してみようと思う。 パイロットであるフェビアンの死の報…

車椅子の女性をみて――依存に関して

夜道を谷保駅から歩いて帰っていた。谷保駅のあたりには3年間ほど暮らしていたので、あちこちに記憶が染み込んでいる。 見る景色ひとつひとつがよすがとなって、記憶の色彩が胸に甦っては消えていった。輪郭はもうぼやけてしまっていたけれど、甦る鮮やかな…

「ここまでが私だ」とはっきりと境界線を引けるひとはどれだけいるだろうか。 たとえば、喪失感。 大切な居場所だったり、大切なひとだったり。なにかを失うということはただ、そこへと向かっていた気持ちが行き場をなくす、それだけの事態なのだろうか。あ…

「喪の作業」――デリダの言葉から考えたこと

「喪の作業」これについて書くのは何度目だろう。 それだけ喪うものが多い人生だったのか?「彼は我々に、涙を流してはいけないなどと教え込んだりはしない。彼が我々に思い起こさせてくれるのは、涙を味わってはならないということだ。」『涙を味わってはな…

わがままな愛

(2009年08月12日08:15のmixi日記から転載)この夏学期、副ゼミで愛について研究してました。 なんだかケリがついた気がするので日記に記そうと思うのです。◆ 愛にとってなくてはならないものは、わがままに甘えて、欲しい!!って思うことです。「あなた」…

内面の空虚、意識の希薄、精神の貧困および孤独について

Arthur Schopenhauer APHORISMEN ZUR LEBENSWEISHEIT 邦訳:『幸福について―人生論―』(橋本文夫訳)(p.106迄)を基に◇はじめに 私は幸福だとかよき生活を送る智恵が欲しくて本書を読んでいるわけではない。私が第一に興味があるのは孤独感といわれるもので…

愛について

1. 問題提起 家族や恋愛関係においてみられる「俺の女」だとか「私の坊や」といった言葉には言外に独占欲、排他性の意味が色濃く滲み出てきている。これら所有の要素が持ち込まれることはどのような問題を引き起こすのか。自由と平等という二つ理念を主軸と…

「もう嫌だ!」から始まる物語

「もう嫌だ!」から始まる物語があってもいいと思うんだ。 その、もう嫌だという気持ちが深ければ深いほど、 なぜ嫌なのか、ということを突き詰め、考え抜く能力さえあれば、 マイナスからゼロへ、そしてゼロからプラスへと、物語は紡がれると思うんだ。 憧…

靖国参拝から始まる一年

あけましておめでとうございます。元旦に友達二人と靖国に参拝しました。祈願っていうか「私も頑張ります!」的な宣誓になってしまった。だってさ、大きなものがあったほうが頑張れるじゃんか。守ってもらえてるから、帰る場所があるから、走り出せるんじゃ…

辞書を持って生きていれば、幸せでしょうか

前回のエントリーから5ヶ月弱経つ。指を折って数えてしまった。単純な計算は苦手だ。 何故って、後頭部に漬け物石でも寄生したような頭痛に三ヶ月ばかり悩まされたうえに、連合弛緩なんじゃないかってくらい観念放逸状態にあって、思考が迂遠し、すべてがま…

世界の配色

世界の配色はだれが決めているのだろう。窓の外には紅葉の梢を前景に、今が盛りと野菜が成り、連なる山の上には空が広がる。今朝、起きたときにはたしか、五月蠅いくらいに眩しくて綺麗な色を見た。ある時、突然に、その世界の配色は変わり、今はすべてがく…

(生きる糧としての)欲望について

なんだろうか、あまりにも「統一」とはかけ離れた世界を自らの心中にすら認めざるをえなかったからだろうか、その不可能性を明めることに諦めざるをえないことを知ったからだろうか。いまの私に「嫌いな言葉は?」と聞いたら「概念。」と答えるだろう。自ら…

随想――哲学と経済学

群馬北西部はまだ肌寒い。20kmほど真っ直ぐ突っ切れば新潟県に入ってしまう程の山中、田中角栄の頭の中では切り崩す山の一部だったのだろうか。今、上野行きの特急草津に乗り込む。高校の時は同じ車両が渋川まで快速運行していたから、この特急草津の車両は…

THE FLAG Flutterin' in 2005

それがよすがとなって零れ落ちた記憶を呼び起こすような文章……そのような文章が名文と呼ばれるに値するのだろう。実家に帰り自室の本棚の前で心に触れた本の頁を繰っていたら久々に声をあげて泣いてしまった。 この日記に付されたタイトルを見て、判る人には…

宿酔――已まぬ動悸、病まぬ思考

何日も調子良く知識を仕入れ活発に過ごす日が続くと、連日の飲酒がもたらす宿酔に似た時期がやってくる。 その時期には、決まって精神状態は沈んでいて読書や外出などの意欲は起きない癖、思考は鋭利になりそれまでの期間に溜め込んだ知識を再構築しアウトプ…

紅茶

BRODIESのRoyal Scottish、高貴な香りと力強さを感じさせる深みのある味。なんであれ、ほんとうに美味しいものはストレートで受け入れられるものなのだろう。 希望を忘れないーーそれを心に誓うためにHOPEを吸っている。悪くはないだろう。純粋なる意志。意志…

欺瞞

博愛?結局は私は目において対峙できる人間しか愛することをしないし、相手が愛を求めていようとも、その見返りがマイナスと予測されるときは愛そうとはしない。つまり、私にはセンの意味でのコミットメントは未だ為し得ない。実に伝統的な経済学の想定する…

学問の水準について 『存在と時間』より

「その研究の本当の進歩は…(略)…むしろ、事象についてこのように蓄積されていく知識の増加からたいてい反作用的におしだされてくる、それぞれの領域の根本構成への問いのなかにある。」(p.43) 「諸科学の本当の『動き』は、それの基礎概念に加えられるーー…

ちやほやされたい

「ちやほやされたいんじゃないの?」ーー主に女性に対して遣われるこの言葉には、大抵否定的なニュアンスがふくまれている。しかし、それがなぜ否定的な意味を帯びるのかふと考えてみると、その答えは《社会の構築物》以外に見つからない。なぜならば、社会を…

判断・・・

「判断」とはなんであろうか。ある対象を主観によって判断することでその対象をその判断の檻に閉じこめることができる。人間は整理整頓が好きだ。見聞きする対象の表象をショーケースのどこかに仕舞うのが大好きなのだ。そうすれば、次にその表象の類似に出…

独占欲について

独占欲ーー特に恋愛における排他性や嫉妬は、どこから生じるのだろうか。一元化してしまえば、安定的な自己の保障となるのだろう。 つまり、相手を「我がもの」として定位することにより、対他存在である自己を安全な領域へと確保しようとする欲求がみてとれ…

トラックレコード

トラックレコードとは金融で使われる概念であり、ある取引先とのそれまでの信用の蓄積である。 敷衍して、ある特定の存在者との関わりにおいてその時間ごとの表象の蓄積ーーある相手との時間の束と解することもできるだろう。 トラックレコードは、その相手…

『落石注意』

こないだ友人と、『落石注意』の標識はなんのためにあるのか話した。実際、運転手が上方なんて注意できる訳がない。だとしたら、行政の責任軽減?運転手に覚悟しろという警告?どちらにしろ、そこで最悪の事態が起きうることを知らせることは間違ってない。…

「日常」――東京の皆様へ

日常とは、存在者を確かに世界に定位させ、その存在を保証するものである。日常の崩壊、それは存在の崩壊である。そこで存在者は世界の諸物の存在を定位できなくなり、存在できなくなる――発狂する。今、その日常が崩壊しかけている。 原因ははっきりしている…