独占欲について

独占欲ーー特に恋愛における排他性や嫉妬は、どこから生じるのだろうか。一元化してしまえば、安定的な自己の保障となるのだろう。
つまり、相手を「我がもの」として定位することにより、対他存在である自己を安全な領域へと確保しようとする欲求がみてとれる。恋愛という言葉が規定する関係は、最も顕著にそれを担保するものなのだろう。それ故にーー対他存在の揺らぎやすさを確固とするために、不完全な自己をそれもで愛そうとする自己愛のために、相手を手段としようとするのが独占欲であり、恋愛の排他性の源泉であろう。
つまりは、皆人間は、自分が不完全であると自覚していようといなかろうと、自己の安定のために他者を自己の安定の手段として独占しようとする。他に安定の術がないのであれば私はそれに従おう。しかし、対他的にーーしかも他の一者の独占という他者の意志に対する暴力の上にしか成り立たぬ自己ならば、それを乗り越える途を指し示すのが愛のあるべき処方であろう。それまでの過程的価値としての独占欲は受け入れよう。しかし、その先を常に志向させるべく動かねばならない。それが救済の名に値するだろう。結局はだれもが孤独にしかあれないのだ。