2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

佐藤俊樹(2010)「第1章「情報化社会」とは何か」(『社会は情報化の夢を見る〔新世紀版〕』)

第1章で扱われている問題は「『情報化社会』とは何か」である。この問題に対して本書は、「情報化社会」は空虚な記号であり、技術予測の名を借りた未来社会への願望にほかならないと断じる。 まずこれを示すために、「情報化社会」は実体が存在しない空虚な…

中井久夫(2004)「踏み越えについて」(『兆候・記憶・外傷』所収)

ファーストキスから戦争まで——。 一見無関係な両者に「踏み越え」という共通項を中井はみてとる。「踏み越え」とは広く思考や情動を実行に移すことであり、言語よりもイメージよりももう少し以前の《もの》に触れることで引き起こされる。この《もの》は、同…

アリソン・ゴプニック(2010)「第一章 可能世界」(『哲学する赤ちゃん』所収)

母が学芸大の修士課程で発達臨床心理学を学んでいた頃に薦めてもらった本だ。 ある詩からの印象深い引用がある。 人が口にしたり書いたりするなかで、いちばん悲しい言葉、それは《かもれなかったのに》(35,6) 私は何度もこの言葉を吐いてきた。辞めざるを…