2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ピエール・バイヤール著, 大浦康介訳(2016)「Ⅰ-1 ぜんぜん読んだことのない本」(『読んでいない本について堂々と語る方法』)

ムジールの小説『特性のない男』に登場する図書館の司書は全部の本について識っている。それは、一冊として中身を読まずに、目録だけを読むという方法によってだった。 ムジールの司書の賢明さは、「全体の見晴らし」というその考えから来ている。私は彼が図…

小林康夫(2015)「2-1 皮膚の哲学をもとめて」(『君自身の哲学へ』)

自他の区別が今大きく揺らいでいる。(74頁) 私とその他の事物との境界は皮膚だ、というのは当たり前のような気がするが、この本を読むまであまりそうには思ってこなかった。誰かの肩に手のひらを載せるとき、触れているのは確かに皮膚だ。皮膚なのだけれど…

小林, 康夫. (2015). 「第1章 ブリコラージュ的自由のほうに」. (『君自身の哲学へ』)

この章の第2節「自分だけのスタイルに向かって」では安部公房『砂の女』で、昆虫採集を趣味にしている青年が砂原の窪地に落ちてしまい出てこれなくなってしまう場面が取り上げられる。これは前節の「井戸的実存」の話の続きである。ここで青年はカラスを捕ま…

松岡, 正剛. (2005). 「2 フラジリティの記憶」.(『フラジャイル』所収)

「弱さ」とはなにかという問題をフラジャイルという言葉の消息を求めることで見つけていこうというのがこの本の目的だ。多様な文学作品への言及、多様な言い換えの中をさまよい続けさせられて「結局フラジャイルとはなんなのだ?」という思いに駆られるが、…

フランソワ, ジュリアン. 著. 中島, 隆博. & 志野, 好伸. 訳. (2017). 『道徳を基礎づける』

「誰もが、他者の身に起こることに忍びざるものがある(人皆有所不忍)」。[...] 誰にとっても、他人が不幸に沈んでいる時に、無関心でいられず、反応を引き起こすものがあるということ、それが「仁」なのだ。(34頁) この「忍びざる反応」とはなんなのか。…