冬の香

なぜか自室に、灯油の匂いが香ってきて

ふいに涙がこぼれました

それは、冬の群馬の匂いでした

あたたかな灯油ストーブ、記憶の中の遠い冬の香

東京―――すべてにそこにいる意味、進むべき途・・・それらがないとそこにはいてはいけません

草木ですらそう

かつての雑木林は伐採され、街路樹や公園・・・すべてはひとの意味づけの中に押し込められ

そこにいる自分もまた、そういったひとの意味を持たねばならないと腐心し、壊れていく

群馬の田舎は、すべてが”そのまま”で、意味を必要としなくて、

ああ、ここにいて、生きていていいんだ、そうに思わせてくれます

東京は疲れます

だから、田舎を思わせる灯油の匂いに涙したのです