ある渇いた心象
荷を負い往くある駱駝が、砂漠に斃れた。
その駱駝はそれでも往かんとし、立ち上がらんと自分に鞭を打った。
それは、彼の強さからだったのだろうか。
立ち上がらんと、往かんと、必死に足掻く駱駝のそれは、強さだったのだろうか。
駱駝はなぜそこまでして往かんとしたのか。
背負った荷がそこまで大切なのか
斃れた砂漠が焼けるように熱かったのか
駱駝の目からそれを窺い知ることは僕にはできなかった。
荷の重荷に耐え、砂漠の熱さに耐えるのが、駱駝の求めた強さだったのだろうか。
それは僕には窺い知ることはできなかった。
いや、すべきでないと思ったからそうしなかったのかもしれない。
あの駱駝は今、幸せだろうか。
否、彼にとっての幸せとはいったいなんであろうか。なんだったのであろうか。
重さと熱さに耐え往くことが、はたして彼の幸せだったろうか。
荷を背負い、砂漠へと発ったときの彼の心には、それは幸せと映ったであろうか。
戦うべきはその重さなのか?熱さなのか?
違ったんじゃないか。
違うんじゃないか。
戦うべきは、その荷なんじゃないか?その砂漠なんじゃないか?
せめてその砂漠に日陰があれば、そこでしばしの休息がとれるだろうに。
せめてその日陰を作れれば。