cites:ベイトソン『精神の生態学』、『精神と自然』

精神の生態学

精神の生態学

「『ハート(情)には、リーゾン(理性)が感取しえない独自のリーゾン(理)がある。』フランス人、パスカルの言葉だ。」(G.ベイトソン

「交わされるメッセージに先行して関係があるのではない。メッセージが相互に組み上がり結びあっていく、そのコンビネーション・パターンを、言語的コードによって記述したものが、たとえば『愛』であるわけである。」(G.ベイトソン

「芸術とは、心の無意識を伝え合う術であるといえる。あるいは、そんな種類のコミュニケーションをもっと豊かに実践できるよう、心を鍛えてゆくための遊技だともいえる。」(G.ベイトソン

「(適応のための)試行錯誤には必ず錯誤が伴う。錯誤は、生存を脅かし、精神の安定をも脅かす。そのマイナスを最小限に食い止めるには、適応が常にヒエラルキー構造を持っていることが必要になる。」(G.ベイトソン)習慣、学習は試行錯誤の回数を減らす。「前提を分析にかけない習慣」

「注目すべきことは、習慣の前提とすることが、抽象的な事柄だという点だ。…習慣でうまく処理できるのは、一般的に、あるいは反復的に、真である命題に限られる…人間関係を記述し決定する(このような)命題の数々が習慣として心の着床し、それによって…種々の症候群が生まれる」(G.ベイトソン

外界に正対する一かたまりの主体性――《場》の変化によって変わらない安定したパターン――を《わたし》と呼ぶとすると、時の地殻の大変動のなかで、その《わたし》が希薄化し、消散しつつあるように思える。―佐藤良明『ラバーソウルの弾みかた』>>しっかしベイトソンは面白い。

ベイトソンは「ダブルバインド、1969」(イルカの実験)のなかで複数のコンテクストの衝突による主体の混乱をスキゾな苦痛に陥るものとする一方で、それを乗り越えた主体が創造性を獲得することを述べた。

[イルカショーでのオペラント条件付けの物語]「1)他の動物との重要な関係性を律する規則を誤解するような状況に追いやられた動物は、激しい苦痛感と不適応症状を呈する…2)そうした病変への落ち込みをすり抜けた、あるいはそれに耐え抜いた動物にあっては、創造性が促進される」(Gベイトソン

「複数のコンテクストを股にかける才能によって豊かな人生を送る人たちがいる一方で、複数のコンテクストの衝突による混乱から生きる力を失ってしまう人たちがいる。その両者に共通しているのは、世界を二重に受けとるという点だ。」(G.ベイトソン

「愛を装う母」エピソードに心痛む。ベイトソン精神分裂病の理論化に向けて」

時があまりにツラく流れるから、同じ事実が昔と今では違う意味を持ってしまう。近くにいたいのに遠ざけたい記憶。未だに答えが出せないのはこの種の記憶による苦しみ。どうしたらいいのだろう。「トランスコンテクスチュアルシンドローム」(ベイトソン

今日存在するものは記憶と呼ばれる、過去についてのメッセージであり、これらのメッセージはその時々で新しくフレームされ、変奏され続けていくのです。―G.Bateson「精神分裂症の集団力学」

ベイトソンは本能や本性などの概念に、『研究促進的概念』というカテゴリーを設けた。

「本論は、有機体の行動に見られる学習の現象を、論理学のフォーマットに合わせて分類しようというものである。動物のみならず機械も含めたコミュニケーションの世界に、階型理論のようなものが当てはまることを、本論は主張する」(G.Bateson[1971])

「学習」とはなんらかの変化を指し示す、ということから、「変化」をヒエラルキー構造で捉えたニュートン以来の物理学のアナロジーから切り込もうとするベイトソン

自我の強さとは自分がいま、どのコンテクストに置かれているか理解する能力だというベイトソンの定義は結構、現実をうまく捉えさせてくれる。

「科学は証明[prove]しない。探索[probe]するだけだ。」(ベイトソン